いのちを育む醤油と、リガレッセの食づくり
研修の一環として、兵庫県養父市にある大徳醤油株式会社の醤油蔵を訪ねました。
——「なぜリガレッセは大徳醤油を選ぶのか」。
その答えを探しに行った日のことを、ここに記します。
はじまりの香り
駐車場に車を停めた瞬間、甘い香りが広がってきました。みたらし団子を思わせるような、懐かしくて深い香り。これが醤油の匂いか、と改めて思いながら建物の中へ。
知ってもらうことから
はじめに、代表の浄慶さんからお話をいただきました。
現在の醤油業界は、廃業・倒産が続いているそうです。
浄慶さんが家業に戻った時も、同じ危機の中にいた。
そこで取り組んだのは、まず「知ってもらうこと」。
子どもたちに醤油の作り方を伝える。手作りキットで体験の場をつくる。
説明のなかに、伝えることへの実直な姿勢が滲んでいました。
——この姿勢は、リガレッセが「発信することはケアの延長線上にある」と大切にしていることと、
どこか重なる気がしました。

1年という時間
現在多くのメーカーが採用している「速醸」は、脱脂加工大豆を使い約6ヶ月で醤油を仕上げます。
効率はよい一方で、原料の生産者や栽培環境が見えにくくなるという側面もあります。
大徳醤油は、天然醸造。
四季の温度変化の中で、蔵に棲みつく酵母や微生物にもろみをゆだね、
一年かけてゆっくりと発酵熟成させます。
醤油は、全ての原料を麹にする食品。この技術は日本にしかない。そして日本の発酵食品の中でも最も複雑な発酵過程を持つのが醤油です。塩を加えることで、塩の中でも生きられる菌だけが残る——塩が菌を選別する役割を果たすのです。
聞けば聞くほど、醤油という食品の奥行きを感じました。
菌が棲む蔵へ
お話のあと、醤油蔵の中へ案内していただきました。
壁は一面、酵母の菌糸で黒く染まっていました。長い年月の発酵が積み重なった壁。床も同じく、良い菌が住み着いた場所として機能しているそうです。
静かな蔵の中に、大きな四角い木桶がずらりと並んでいます。シーンとした空間の中に、プツプツ、スーッという小さな音が聞こえてくる。
発酵している音です。急かすことなく、菌のペースで育てていく。その静けさと、かすかな生きている音が、醤油づくりの時間をそのまま伝えているようでした。


絞り出す
布に包まれたもろみを重ね、圧力をかけて搾っていく。その布の質感と、年季の入った機械の重さが、天然醸造という仕事の手間を物語っていました。

発酵の食卓へ
見学の後は、大徳醤油さんが運営される発酵料理店「Soya」へ。醤油粕を使ったスイーツや、発酵を取り入れた料理をいただきながら、食材としての醤油の可能性を改めて感じました。
研修を終えて——なぜリガレッセは大徳醤油を選ぶのか
見学を重ねるうちに、最初の問いの答えが腑に落ちてきました。それは、大徳醤油の軸である「いのちを育む食べ物づくり」という理念です。
動物や植物の命が食を通して人間の命を育む——この考え方は、動植物の命を守ることにもつながります。リガレッセの自社農園では、人間だけでなく小動物や自然に生える植物の命も守れるような有機農業が行われています。この命の循環を大切にする姿勢が、大徳醤油と重なっていました。
一つ目は、国産原料へのこだわり。醤油の原料である大豆の約97%が外国産という日本の現状に驚きました。しかし大徳醤油はすべて国産。遺伝子組み換えやポストハーベスト農薬の心配がない原料だけを使っています。この安全性は、リガレッセが求めるものと共通しています。
二つ目は、伝統的な製法。四季の変化の中で微生物が自分たちのリズムで活動し、時間をかけて醤油が作られています。リガレッセの自社農園では米糠や魚粉を用いて土壌生物の力を高め、生物の力でよい土と変化させていく。生物の力を生かすという思想が、醤油蔵と農園でつながっていました。
単においしさだけでなく、食の安全性や生物の命までを考えた食材選び。その背景にある考え方を知ることが、日々の食づくりに深みをもたらすのだと感じています。
今後はその背景も大切にしながら、ご利用者様への食づくりに関わっていきたいと思います。
※本研修は、当法人の管理栄養士が研修の一環として訪問したものです。